高額な賠償額(相手への補償)
相手の損害と賠償額の考え方
自動車事故により相手に損害を与えた場合には、過失割合(自分にどれだけ非があったか)に応じて賠償責任を負うことになります。
たとえば、相手に100万円の損害を与えてしまい、自分の過失割合が6割であった場合は、60万円を負担することになります。
対人賠償と対物賠償
自動車事故で負うことになる賠償責任には、大きく分けて対人賠償と対物賠償があります。
対人賠償には、相手を負傷させた場合の治療費、そのケガで仕事ができなかった期間の休業補償、慰謝料などが含まれます。
また死亡させた場合には、逸失利益、慰謝料などが含まれます。
対物賠償は、相手の自動車の修理代、店舗や家屋の修理代などと共に、壊してしまった積荷や商品の損害、店舗が休業を余儀なくされた場合の休業補償などが含まれます。
したがって、自動車保険の対人賠償保険、対物賠償保険に加入する場合には、それらの損害賠償額をカバーできるだけの保険金額で加入する必要があります。
交通事故により、対人、対物でどれだけの損害が発生するか、実際の裁判の判例を見てみましょう。
人身事故の高額損害額と対人賠償保険の保険金額
損害保険協会発行のファクトブックに、人身事故において高額損害額が認定された裁判の判例が紹介されています。
人身事故の高額判決例
認定総損害額 | 裁判所 | 判決年月 | 被害者性年齢 | 被害者職業 | 被害態様 |
---|---|---|---|---|---|
5億2,853万円 | 横浜地裁 | 2011年11月 | 男 41歳 | 眼科開業医 | 死亡 |
3億9,725万円 | 横浜地裁 | 2011年12月 | 男 21歳 | 大学生 | 後遺障害 |
3億9,510万円 | 名古屋地裁 | 2011年2月 | 男 20歳 | 大学生 | 後遺障害 |
3億8,281万円 | 名古屋地裁 | 2005年5月 | 男 29歳 | 会社員 | 後遺障害 |
3億7,886万円 | 大阪地裁 | 2007年4月 | 男 23歳 | 会社員 | 後遺障害 |
3億6,750万円 | 大阪地裁 | 2006年6月 | 男 38歳 | 開業医 | 死亡 |
3億6,551万円 | 仙台地裁 | 2009年11月 | 男 14歳 | 中学生 | 後遺障害 |
3億5,978万円 | 東京地裁 | 2004年6月 | 男 25歳 | 大学研究科 | 後遺障害 |
3億5,618万円 | 名古屋地裁 | 2012年3月 | 男 25歳 | 美容室店長 | 後遺障害 |
3億5,332万円 | 佐倉支部 | 2006年9月 | 男 37歳 | アルバイト | 後遺障害 |
※損害保険協会「ファクトブック2014」より
このように対人の損害額は非常に高額な判決が出る例があります。
上記総損害額は、過失割合を考慮する前の金額なので、被害者側に過失があれば、その分は減額されますが、それでも億単位になることは容易に予想できます。
もちろん、100%過失があれば全額の賠償責任を負うことになります。
したがって、対人賠償保険は原則、無制限で加入するのが基本となります。
物損事故の高額損害額と対人賠償保険の保険金額
損害保険協会発行のファクトブックに、物損事故において高額損害額が認定された裁判の判例が紹介されています。
物損事故の高額判決例
認定総損害額 | 裁判所 | 判決年月 | 被害物件 |
---|---|---|---|
2億6,135万円 | 神戸地裁 | 1994年7月 | 積荷(呉服・洋服・毛皮) |
1億3,580万円 | 東京地裁 | 1996年7月 | 店舗(パチンコ店) |
1億2,037万円 | 福岡地裁 | 1980年7月 | 電車・線路・家屋 |
1億1,798万円 | 大阪地裁 | 2011年12月 | トレーラー |
1億1,347万円 | 千葉地裁 | 1998年10月 | 電車 |
6,124万円 | 岡山地裁 | 2000年6月 | 積荷 |
4,141万円 | 大阪地裁 | 2008年5月 | 積荷 |
3,391万円 | 名古屋地裁 | 2004年1月 | 大型貨物車・積荷 |
3,156万円 | 東京地裁 | 2001年12月 | 4階建ビル |
3,052万円 | 東京地裁 | 2001年8月 | 店舗(サーフショップ) |
※損害保険協会「ファクトブック2014」より
対人賠償の総損害額ほど多くはありませんが、対物賠償でも億を超える損害が認定されるケースがあります。
それは、トラックの高価な積荷や店舗の休業補償などを含めた損害の場合です。
対物賠償というと、どうしても車同士の事故での相手の自動車をイメージしがちですが、上記のように必ずしも相手の車だけが対物賠償の対象ではありません。
ニュースなどでも、お店に車が突っ込んだという事故を目にすることが時々ありますし、実際にそのような事故を起こしてしまう可能性もあります。
そのことをふまえて対物賠償保険に加入するとよいでしょう。
保険金は最低でも1億円くらいにはしておいた方が安心ですし、保険料に特別大きな差がなければ、対人賠償保険と同様に無制限にしておくのが一番安心です。